「良識の府」は今、「タレントの府」
参院選が終わった。年金や「政治とカネ」などが争点だったと言われているが、それは政党や候補の視点だ。多くの国民が感じていながら、選挙戦ではまったくと言っていいほど触れられなかったことがある。「参議院って本当に必要なの?」という点だ。
今回の参院選でも各マスコミが世論調査を行った。どうせ経費をかけるなら「あなたはいまの参議院を必要だと思いますか」との1問も追加すればよかったのにと思う。圧倒的多数が「不要」と答えたのではないだろうか。
国会議員には年間約2200万円の歳費に加え、文書通信交通滞在費1200万円、立法調査費780万円が支給されている。このほか政党助成金が1人当たり約4400万円、3人の公設秘書給与が約2000万円。これだけで1億円を超す。JRや航空会社などの特殊乗車券なども提供されている。
参議院議員242人に1人1億円以上。ほかに事務局職員の人件費や議員宿舎などの経費も膨大だ。
参議院はホームページで二院制の利点を「国民の様々な意見をできるだけ広く反映させることができる」「慎重に審議できる」「一方の行き過ぎを抑えたり、足りないところを補ったりできる」と説明している。強行採決が繰り返されているのに「慎重に審議」もない。
2年前、郵政民営化法案を衆議院は可決、参議院は否決した。小泉内閣は参議院の表決結果を無視して衆議院を解散した。総選挙後は衆議院のみならず、参議院でも法案反対から賛成に寝返る議員が続出し、法案は可決された。総選挙の結果だけで物事を決めるのなら、参議院は何のためにあるのか。
衆議院は内閣を不信任でき、首相も衆議院を解散できる。しかし首相は参議院を解散できない。参議院議員には政局に左右されず、6年間じっくりと、長期的な視野に立って国政の重要問題を審議してもらうためだ。
かつて参議院は不偏不党の緑風会などによって「良識の府」としての機能を発揮していた。いまは「衆議院のカーボンコピー」を通り越し、「タレントの府」といった批判まである。
今回の選挙戦では「参議院はこうあるべき」といった参議院改革論がほとんど聞かれなかった。年金問題などの陰に隠れてしまったが、国民の間で参議院不要論が消えたわけではない。
「いっそ国政に関する直接選挙は衆議院に限り、参議院は各都道府県知事と少数の学識経験者で構成してはどうか。予算や憲法以外の法案審議は衆議院が担い、参議院は憲法など国の根幹にかかわることだけを審議すればいい。そうすれば衆愚政治を避け、地方分権も進む」といった意見もある。
参議院で与野党が逆転したいまこそ、参議院のあり方を真剣に考えるチャンスなのではないだろうか。(スキップビート58 8月7日付け三条新聞)